2015年8月5日水曜日

母から母へ

今回は、前回とがらりと変わりビジネス向けの本ではなく、
南アフリカ文学と呼ばれる「母から母へ」という本を読みました。


1993年南アフリカのタウンシップ(旧黒人居住地区)でアメリカからの女子留学生(エイミービール)が、
黒人青年の群れに襲われ殺されたというエイミービール事件を元にした本です。
アパルトヘイト政策の終わりをつげた全人種参加の総選挙の実施をサポートするために
南アフリカに留学し、まさに留学生活を終わろうとしていた矢先に、自分が思いを寄せた黒人たちに殺されました。

この本はその犯人のお母さんが、被害者のお母さんに向けた手紙という形で書かれています。
なぜこの黒人青年が殺そうという思いに至ったのか。
黒人青年のお母さんが小さい時から、
そしてその問題となった黒人青年を産み育てていく中での境遇を通して
如何にしてその感情が生まれていったのかが書かれています。
馴染み深かった家々を突然白人たちに別の土地へ集団で移るよう言われたり、
あまりにも大きい経済格差の中で虐げられたりとそういった負の感情のようなものが
社会全体として少しづつ溜まっていったのではないかと思います。

また、当時は白人を殺した黒人が逮捕されたら死を持って償うという鉄則があった時代だったそうです。ただ、アパルトヘイトが終わりこれまでの負の連鎖を断ち切るために真実和解委員会が
設置されました。
そこで犯罪を犯したものがすべてを告白すれば、それと引き換えに免責を得ることができるようになりました。
この犯人はエイミーの両親の門前で罪を告白すると、その両親はこの和解のプロセスを支持することが亡くなった娘の本意だと確信すると述べ免責を承認したそうです。

「人を殺したのにもかかわらず釈放される」という事実のみ捉えると今の日本では考えられないし、
ましてや自分の息子が殺されたとして、相手を許せるかと言ったら許せないと思います。
ただ、人を殺してしまうという感情を生んでしまった社会への反省と負の連鎖を断ち切るための一助としてはとても寛大な考えなのだと感じます。さらにそこまでの感情を生み出すほどまでにアパルトヘイトは凄まじかったのではと想像します。

こうしたバックグランドがあるんだなと知った上で、現地に行けばまた違ったものの見方ができるのではと思いました。

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